季節外れの雪の写真です。それには訳があって…。
以前、このブログでも紹介した書家の阪野鑑 (阪野 鑑 展 - 36年のかたち -)。
何の前触れもなく作品を贈ってくれました。その作品がこちら。
阪野鑑 作 「礀底の松」(かんていのまつ)
私は書に通じている訳でもなく、また、こういった言葉に詳しい訳でもありません。でも、彼の個展でこの書を目にした時、一目で気に入りました。
「礀底の松」の出典は、禅語の 「風吹不動天辺月 雪圧難摧礀底松」から来ています。
- 風吹けども動ぜず天辺の月、雪圧せども摧け難し礀底の松 –
(かぜふけどもどうぜずてんぺんのつき、ゆきおせどもくだけがたしかんていのまつ)
個展の作品案内には 「外的な困難(雪)にも屈せずに、(谷底の松のように)どんな場所であれここと決めた場所に根を張りめぐらせ、そこから深く滋養をいただいて生きていく」と書かれていました。
「雪圧難摧礀底松」
覚王山ハウスの開業間もない頃、この地に雪が降り積もりました。雪で人影少ない朝の覚王山の街を歩き、誰もいない日泰寺の境内に向かいました。その時撮ったうちの一枚が冒頭の写真。松の写真ではありませんが、その時の想いとこの書とが重なります。
個展には素晴らしい大作も数多くあり、大変見応えがあったのですが、小品集のファイルの中にひっそりあったこの書に何故か強く惹きつけられました。書を評するような能力も資格もないのですが、敢えて言えば「自分にしっくりきた」という感じでしょうか。
書家と私は、以前東京の同じ職場で共に働いた仲間です。彼は現在沼津に拠点を置き、私は名古屋・覚王山。
この時代に書に打ち込む彼の意思は幾許のものでしょうか。私に理解できているとは言えません。しかし、彼の進化に触れることは私の歓びです。
いつか彼に書作を依頼しようと思っていました。友人としてではなく書家への仕事の依頼として。でもその前に彼の作品がやってきました。
すぐにお礼の電話をしたら、「個展の場で話した時に贈ると決めてました。」と事もなげに言っていました。
かっこええのお。
早速、事務所に飾りました。
ポロックと並んでいます。
リンク : 阪野鑑 書作展覧會 web会場