高速を飛ばして、沼津まで書家の個展に。
沼津市に拠点を置く書家、阪野 鑑。
昨年3度目の日展入選。この度、モンミュゼ沼津(沼津市庄司美術館)で個展を開催。
彼はかつて同じ職場で働いていた仲間です。私よりひとまわり若い彼ですが、作品を見に行くたび、刺激をもらっています。ブログに写真を載せてもいいと、許可をもらったのでいくつか載せちゃいます。
冒頭の写真は、「楷書千字文」 の一部。330×650cm の大作です。
※写真をクリックすると拡大します。
これは、金の水彩絵の具で書いたのだそうです。
こちらが昨年の日展入選作、「驕児詩」。
国立新美術館に展示されている時も見に行きました。
ひとり作品に見入りながら、文字や紙の上に拡がる空間に、確実な進化を感じて力をもらった気がしたものです。
彼の書を見に行くのは、友人だから、というよりも、彼の書が好きだからです。
彼に出会うまで、書をまじまじと見ることなどなかった私ですし、書かれている言葉の意味も聞かなければわからないこともしばしば。
それでも、文字やそれを取り囲む空間、選ぶ言葉や詩、そこに刻まれた時間の流れ、彼の書から色々な刺激をもらいます。
個展の初日に、来場した人々の前で、実際に制作したものがこの 「裴将軍詩」。
私はライブでは見られませんでしたが、会場ではビデオが放映されていました。すごい数の人が見入っていました。大盛況です(今日も平日なのに次々来場者がいてちょっと驚きました。書ってこんなに集客力ありましたっけ?)。
彼は家族にも書くところを見せた事がなかったそうで、きっと大きなチャレンジだったのだろうな、と思います。
派手なパフォーマンスではなく、書家としてのありのままを見せようとする書家の試みと、その場で制作された作品の凄みに、すごい底力を感じました。
書家自身は制作後、色々と思うところもあったようで、個展開催中に再度書いた「「裴将軍詩」 も会場に展示されていました。
作品で使用した筆も一緒に展示されていて触る事ができたり、親しみやすい題材があったり、私のように書にあまり触れたことのなかった人間でも楽しめるように工夫されていました。良いと思う作品、いまひとつと思う作品を来場者に投票してもらうという珍しい試みもありました。先人から学び、厳しく研鑽を積みながらも、誰もが書に触れやすく楽しめるようにしたいという、書家の努力を感じました。
さて、会場内を組まなく見てまわりましたが、その中で私が特に気に入ったひとつ。小品集としてファイルされているものの中から見つけました。写真が光っていて残念ですが…。
「礀底の松」(かんていのまつ)
- 雪圧せども摧け難し礀底の松 - (ゆきおせどもくだけがたしかんていのまつ)
「外的な困難(雪)にも屈せずに、(谷底の松のように)どんな場所であれここと決めた場所に根を張りめぐらせ、そこから深く滋養をいただいて生きていく」
※ 会場にあった作品の解説から引用しています。
文字と言葉の意味の両面から、私の今日の1枚です。
個展の開催期間はあとわずかなのですが、書家のブログにリンクをはっておきます。
阪野さん、こんなに写真載せて大丈夫だったかな。まっ、いいよね。